誰もが陥る!その不動産「売る」ことも、「貸す」こともできまへんで!
2026-03-31
ここ最近、本当に増えてきたご相談があります。
「この家を売りたいのですが、できますか?」
一見、普通の相談です。
しかし、話を少し深掘りすると状況が変わります。
「いえ、父の名義になっています。
売って父の高齢者施設の費用にしたいのです。」
私は必ず確認します。
「大変失礼ですが、お父様に認知症はございませんか?」
この質問をすると、
一瞬、空気が止まります。
しかし、この一言が
不動産取引の“可否”を決める
極めて重要な分岐点なのです。
なぜ認知症で売れなくなるのか?
不動産を売る、貸す、買う、借りる。
リフォーム契約をする。
賃貸契約を結ぶ。
これらはすべて「法律行為」です。
法律行為には原則として
本人の「意思能力」が必要です。
ここでいう意思能力とは、
・契約内容を理解できる
・自分の行為の結果を判断できる
・合理的な意思決定ができる
という能力のことです。
認知症が進行している場合、
この能力があるとは言えない可能性があります。
つまり、
たとえ本人が「売る」と言っても、
法的に有効な契約と認められないことがあるのです。
データが示す現実
認知症は特別な病気ではありません。
・65歳以上の約8人に1人
・80代後半では約3割
・95歳以上では女性の8割以上
・2025年には高齢者の5人に1人
日本の超高齢化社会では、
極めて身近な問題です。
「うちはまだ元気だから」
その“まだ”が突然終わることもあります。
家族全員が合意していれば大丈夫?
よくあるご質問です。
「家族も相続人も全員賛成しています」
しかし、それでも取引は進められません。
理由は明確です。
契約が将来、無効と主張された場合、大きな法的リスクになるからです。
仮に10年後、相続人の一人が
「あの時、父は正常じゃなかった」
と主張すれば、売買契約の有効性が争われる可能性があります。
不動産会社も司法書士も、その爆弾を抱えることはできません。
実務で起こる“動かせない不動産”
実際にあった話です。
長年空き家だった実家。屋根が傷み、雑草が伸び、近隣から苦情が入る。
隣人が「買いたい」と申し出る。
絶好のタイミング。
しかし、所有者である父が認知症。
結果、何もできない。
固定資産税だけ払い続ける。
建物は劣化し続ける。
近隣との関係も悪化する。
「もっと早く相談すればよかった」
この言葉を何度も聞いてきました。
病気や事故でも同じ
認知症だけではありません。
・事故で意識不明
・重度の精神疾患
・脳梗塞後の判断能力低下
これらも同様です。
以前、心の病で入院されていた方の
売却に関わったことがあります。
医師同席のもと、
意思能力の確認を慎重に行いました。
それほど、
不動産取引は“意思確認”に厳格なのです。
では、どう対策するのか?
選択肢はありますが、
どれも一長一短です。
【1 生前贈与】
意思能力があるうちに名義を移す。
相続時精算課税制度を使えば
2,500万円まで贈与税なし。
しかし、
・将来の相続バランス
・兄弟間の公平性
・税務上の取り扱い
慎重な設計が必要です。
【2 家族信託】
親の財産管理を子が担う仕組み。
柔軟性は高いですが、
・設計ミスによるトラブル
・使い込み疑惑
・相続発生後の分配問題
新しい制度ゆえのリスクもあります。
【3 成年後見制度】
法的には最も安全。
しかし、
・一度開始すると原則取り消せない
・後見人報酬が毎月発生
・取引ごとに家庭裁判所の許可
自由度は大きく制限されます。
実は一番多いのは「先延ばし」
多くのご家庭は、
「まだ元気だから大丈夫」
と考えます。
しかし、元気なうちに話し合うことこそが最も重要なのです。
認知症が発症してからでは、打てる手は限られます。
不動産は“動かせる時”が勝負
不動産は資産ですが、
同時に「管理責任」でもあります。
動かせなくなると、
・税金は払い続ける
・修繕費はかかる
・相続時に揉める
・売却タイミングを逃す
という負の連鎖が始まります。
結論
最大のリスクヘッジは
「意思能力があるうちに動く」
これに尽きます。
認知症になってからでは“売れない・貸せない”不動産が生まれる。
それは家族の負担になります。
ぜひ一度、ご両親・祖父母と財産管理について話し合ってみてください。
それが、将来のトラブルを防ぐ最良の方法です。


