いまだに?日本で地面師事件がなくならない理由
2026-02-28
地面師って実在するのか?
「地面師」。ドラマが大ヒットし、多くの日本人がその単語を知ったことと思います。
不動産業界において、特に商業用や水面下から話を進めていくような仕事をしている僕にとっては、珍しくもない言葉です。
(ベンチャービルの大家と、少林寺拳法とハワイだけが仕事ではありません笑)
さて、そんな地面師について、多くは動画などで語られていますが、今日はそのもっと深いところからお話しします。
地面師のはじまり
ドラマを見ていると、「本人になりすます」のが地面師のようですが、もともとは手口が違いました。
まず、地面師とは「地面(不動産)」を使った「詐欺師」から来ています。
地面師が暗躍しはじめたのは、戦後でした。
不動産というのは、不動産そのものに「持ち主」が書いてありません。
では「これは私の不動産だ!」と主張するためには、法務局において、不動産の登記簿謄本に「権利の登記」をしておく必要があります。
よって、不動産の所有者を調べる場合、昔は法務局に備え付けられている登記簿謄本を見て、所有者を確認していました。
しかし、戦後に空襲などで法務局の資料が焼失したことで、不動産の所有者を証明する方法がなくなった物件が発生しました。
そこに「ここは俺の土地だ」と言い張って、他人の土地をだまして売る地面師が現れました。
まずは「所有権を照会できない状況を利用し、自分が所有者だと騙す地面師」がうごめいたのです。
進化する地面師
さて、当然、戦後から時は流れ、法務局の資料も再整理されました。
そうなると、地面師としても違う方法が必要になります。
とはいえ、当時は今のようにデジタル技術も発達していなかったため、身分証明書の偽造などは難しかった。
よって、次に行われたのは「登記簿そのものを書き換える」という、大胆すぎる方法でした。
繰り返しになりますが、法務局の不動産の登記簿謄本には「今、誰が所有者か」が記載されています。
今はデジタルデータですが、昔は紙に書かれたものがバインダーに挟まれて法務局に保管されていました。
この時、地面師が行った方法は「法務局にある登記簿謄本に書き足す」という手口でした。
私が仕事を始めた当時、今から約27年前。
まだ法務局は紙の資料でした。
私も物件の所有者調査などをするときは、法務局に行き、「この土地の謄本が見たい」と申請します。
すると、職員が大きなバインダーを持ってきます。
そこに、その物件の登記簿が入っているのです。
当時は必要があれば、そのページをバインダーから外してコピーしていました。
そんな事情だったので、当時の地面師たちは、こんな方法で登記簿を改ざんしていました。
登記簿の原本(マスター)の余白に不正な所有者名を書き足したり、ページそのものを偽造したものと差し替えたりと。
登記簿にAさんの登記がされており、現所有者はAさんだとします。
そこに地面師は「AさんからBさんに売却され、所有権が移転した」と書き足すわけです。
そうなると、本当は売買していないのに、Bさんが所有者だと法務局が証明する形になります。
よって、Bさんの身分証明書と実印は、偽造する必要もありません。
Bさんが、Aさんの知らないところで堂々と売主になってしまうというものだったのです。
現代の地面師
このように、紙ベースで法務局が保管していたデータでしたが、問題も多く、デジタルデータの発達により電子化されました。
こうなると、バインダーは出てきません(笑)
よって、地面師も直接登記簿を書き換えることができなくなりました。
そうなると、方法としては「登記されている現所有者になりすます」という、ドラマでやっていた皆さまご存じの手法となったのです。
実務で買い物しているスーパーまで聞くか?
ちなみにですが、実務上の契約において、ドラマのように「普段買い物しているスーパー」を聞いたりするのか?について。
正直、かなりの大型プロジェクトでなければ、そこまですることは少ないです。
しかし、最近は司法書士さんも本人確認には非常にデリケートになっています。
「もうええでしょ!」とは、私も言ったことはありませんが(笑)
ただ、大前提の話になりますが、特に売主さんについては、「昔から知っている」といったケースでない限り、相当慎重になります。
特に、ドラマと同じように「そこに住んでいる」という事実が確認できないと、不安になります。
少し前にも、表で売りに出ていない物件を買うために、所有者と言われる方に会いましたが、慎重に進めました。
何度も会って話をするのは当然ですが、私はもう一つの方法も、結果として役に立ちました。
それは「古地図」です。
実は、地域の図書館には、戦後以降くらいの地図が年代ごとに保管されています。
売買対象地に、昔何が建っていたのかを確認するために、コピーを取りに行きます。
そして、それを持って所有者さんのところに行き、「昔はこの辺はどうだったんですか?」と聞いたりしました。
特に当時の近所の話をよく知っているようであれば、安心です。
同業者の方、司法書士の方、ぜひ「古地図作戦」をお使いください。
さて、話はそれましたが、最後に、なぜいまだに事件は起こるのか。
それは、日本の登記システムに問題点があるからです。
日本の登記システムと取引の問題
一般的に、不動産売買における所有権の移転は、以下のような流れになります。ドラマもそうでしたよね。
1、売買契約締結後、決済・引渡しに進む
2、決済・引渡し時に、司法書士による売主・買主両者の書類確認
3、書類に問題がなければ、司法書士が「問題ありません」と言う
(ドラマでは、この段階で司法書士が法務局に書類を提出し、受理される)
4、売買代金の支払い
こうなります。
よほど大きな取引でない限りは、「3」のあとすぐに「4」の代金決済(買主より、売主口座への代金の振込・または現金の授受)が行われ、解散し、司法書士が法務局へ届け出ます。
そして、この「法務局への書類申請と受理」に問題があるのです。
問題は、『法務局は、受け取った申請をすぐに処理しない』という点
法務局は、あくまで受け取っただけで、その真偽は時間差で処理されていきます。
ドラマを思い出してください。最初に騙される不動産業者の話。
法務局が、しばらくたってから書類を処理する中で「印鑑証明の偽造」に気づきます。
その後、手紙で「申請却下」の連絡。
買主は当然、登記できるものとしてお金を支払い済み。
しかし、その処理が時間差で行われる。
よって、ドラマのように、申請からしばらくして申請却下となり、その頃には地面師はお金も動かし、ドロンとなります。
この問題点が解決しない限り、日本での「なりすまし地面師詐欺」がなくなるのは難しい。
すなわち、仕組みの問題なのです。
海外では地面師事件はないの?
海外でも地面師事件は「なくはない」ですが、アメリカの場合であれば、
『一度、第三者機関に登記書類とお金を預け、書類が適正となったときに売主に支払われる』
というエスクローという仕組みがあります。
よって、日本のような「時間差」でのトラブルは少ないものの、ゼロではないようです。
海外らしく「不動産詐欺にあったとき用の保険」もあるそうです。
まとめ
このように、日本の地面師事件は、仕組みが変わらない限り、しばらくはなくならないでしょう。
表に出ていない事件も多くあります。
(神戸で実際にあったものも、私の耳には入っていますので……)
皆さんが、直接地面師と関わることは、ほとんどないかと思いますが、今回は話題にもなっているのでお話ししました。
長文でしたが、お付き合いいただきありがとうございます。


